Archive for 7月, 2006
オー・ド・ヴィー その参 神様が教えてくれた酒
前回は“悪魔に注ぐ酒”をテーマに話しました
“悪魔”と“酒”の関係も楽しいですが、そればっかりではちょっと気が滅入ってしまいますね
ということで、第三回の今回は“神様が教えてくれた酒”についてちょっと話します
『spirits/スピリッツ』ということば、耳にしたことがあるでしょうか
『スピリッツ』とは一言でいうと“蒸留酒”のことです
水は100℃で沸騰・気化しますね
アルコールはそれよりも低い温度で気化します
『スピリッツ』は概ねこの気化の際の温度差を利用し、原料からより純度の高いアルコール分を抽出してつくります
ウィスキーもブランデーも焼酎も『スピリッツ』です
その他にも近年『四大スピリッツ』と呼ばれるものがあります
よくご存知の、ジン・ウォッカ・ラム・テキーラです
今回は勉強になりますね
ではもうちょっとお勉強
ジンは穀物を蒸留した液に杜松の実を漬け込んだもの
元々はオランダの医者が利尿・解熱等の特効薬として考案しました
そう、医者がつくったお酒なんです
ラムの原料はサトウキビ
テキーラの原料はサボテンの一種の竜舌蘭(リュウゼツラン)です
ここでquestion
なんで竜舌蘭なんか蒸留するようになったのでしょう
そこにはやっぱり嘘か真かイカした伝説があるんです
18世紀の半ばころ/メキシコ・ハリスコ州
当時のメキシコはスペインの統治下にあったこともあり、人々は貧しく厳しい生活を強いられていた
ある夜、テキーラ村に近いアマチタリャの地で落雷による大きな山火事があった
ただでさえ苦しい日々の中、人々は天の神に失望した
数日続いた山火事もすべてを焼き尽くしおさまった
遠くまで広がる焼け跡
村人がおそるおそる焼け跡を歩くと、黒こげになった竜舌蘭が転がっていた
あたり一面に芳香が漂うのを不思議に思った村人が竜舌蘭をつぶしてみると、中からチョコレート色の汁が滲み出した
そしてそれをなめてみると上品な甘さがあったという
竜舌蘭の株が山火事の熱で糖質に変化したのだろう
こうしてテキーラの村人は竜舌蘭の旨みに気づき、蒸留酒にするアイデアにたどり着く
神様も意地悪だね
素直に教えることができないなんてね
いまではテキーラは全世界に浸透し、メキシコの象徴的存在になってます
苦しみの後に訪れるよろこびの方が
より大きなよろこびになることがある
テキーラで乾杯するときに
そんな神の教えを思い出してもいいかもね
エラドゥーラ・ゴールドを飲みながら
オー・ド・ヴィー その弐 ~悪魔に出すお酒~
蒸しっと暑い、そんな夜が続いていますが
麦酒(Beer)が気持ちいいですね
ビアガーデンとかでついつい飲み過ぎたりしてませんか??
今回は、お酒と物語について
お酒が登場する物語はそれこそ世界中で無数にありますが
飲み過ぎて後悔してしまう夜にこんなstoryはいかがでしょう
ロシアの文豪・トルストイの寓話です
* * *
山の小屋にひとり、生真面目で貧乏な百姓がいた
ある日、小悪魔がパンきれを盗んで百姓を怒らせ、悪の道に引き入れようと画策した
木の上に隠れ、パンを盗まれたことに気づいた百姓が腹を立てて悪魔を呼ぶのをじっと待っていた
しかし百姓は「腹を減らした奴が取ったんだろう」とあっさり諦め、怒ることなく耕作に励んだ
小悪魔は地団駄を踏んで悔しがり、そして、大悪魔からひどくしかられてしまった
その後、小悪魔は名誉挽回の作戦にでた
まず小悪魔は百姓に取り入り、豊沃な土地を与え、豊作にする方法を教えてやった
数年後、穀物がたっぷり実ると、今度は麦をつぶして酒を醸すことを百姓に教えた
百姓は酒を造ると、仲間を集めて酒を振舞った
最初のうちはみんな百姓に感謝をし、百姓もいつも通りの笑顔でもてなした
しかし酒を飲むうちに、この豊沃な土地の取り合いの口論がはじまった
彼らは狐のように狡猾になり、狼のように怒りっぽくなり、ついには豚のようにごろごろ転がって眠ってしまった
その様をみた大悪魔は驚いて、小悪魔を自らの元に呼びつけた
「おまえはいったいどんな手を使ったんだ
あれだけ無欲だった男がいまや強欲にかられて何度も悪魔を呼んでいる ではないか……」
小悪魔は答えた
「何も特別なことはしていません
悪魔は元々あの男の中にもいて、私はその悪魔を呼び起こすため、ほんの少し手助けをしただけです」
こうして小悪魔は、生真面目で貧乏な百姓を堕落させることができたのです
* * *
ぼくらバーテンダーはアルコールの力で悪魔を呼ぶことができる
でもどうせ呼ぶのなら
悪魔なんかではなく、みんなの奥にあるHappyな心を呼び起こしたいね
ルフィーノ・モドゥス2002を飲みながら
オー・ド・ヴィー その壱
お酒のこぼれ話なんかしてみたいと思います
bartenderでもあり、storytellerでもあるんでね
ご存じの通り、Barのお知らせには毎回storyをつけてることだし
好評だったら連載にしよっかな
けっこうお酒の席で使える話なんで、気楽に読んでみてくださいな
※題名の「オー・ド・ヴィー」についてはいずれ語ります
こいつについてはいろいろ話さなくてはならないので
第一回は
“ブランデー”のお話
そして“フランス”のお話
“ブランデー”とはまあ簡単に言うと
ワインなどのフルーツを原料とした醸造酒を蒸留したお酒、です
“ブランデー”に関して、よく『ナポレオン』という言葉を耳にすると思いますが
『ナポレオン』は実は“ブランデー”のランクの呼称なんです
“ブランデー”は蒸留酒なんで、
おおむね熟成の進んだものがよりよい酒だとされます
他にも呼称はいくつかあるんだけど、例えばこんなものがあります
(ランクの低いものから)
『V.O.』 ……Very Old
『V.S.O.P』 ……Very Superior Old Pale
『X.O.』 ……Extra Old などなど
『ナポレオン』は『X.O.』と同等かそれ以上のランクの“ブランデー”を表します
間違ってもBarで「ナポレオンをロックでください」とは言わないようにしましょう
焼肉屋で「特上ください」って言っているようなもんです
話はそれましたが、
じゃあ何で上質な“ブランデー”を『ナポレオン』と呼ぶようになったのでしょう
やっぱりお酒の世界なので
嘘か誠か、イカした伝説があるんです
フランス
時は19世紀
当時の権力のあった祈祷師は口にした
明くる年は前代未聞の荒天候に見舞われ、
大不作、そして多くの人々が死を迎えると予言した
瞬く間にその言葉は国中に広まり
国民は不安で震え上がった
しかし、新しい年がやってきて
記憶にないようなすばらしい天候の日々が続き
その年の葡萄は大豊作
最高級の“ブランデー”がいくつも誕生した
そして同年
この地に将軍・ナポレオン=ボナパルトが生を受けた
いつしか人々は出来のいい最高級の“ブランデー”を『ナポレオン』と呼ぶようになった
嘘か誠かは知らないけれど
その国を愛し
その国の酒を愛するイカしたstoryだね
みんなは人生でいちばんのよろこびの瞬間にどんなお酒を飲むんだろう
昨夜、世界一の仕事をしたアズーリは試合後にいったいどんなお酒を飲んだんだろうね
BOULARD GRAND SOLAGE Calvados X.O.を飲みながら